こんにちは!エンジョイワークスです。
3連休、私は家にこもって映画を11本観ました。
誰ですか?ドン引きしてる人は。
11本観た中で、『イット・フォローズ』というホラーも面白かったんですが、
ちょっと下ネタになってしまうので(簡単に言うと「それ」と呼ばれる怖い何かが
性交渉で相手に感染して、感染した人にだけ見える「それ」がどこまでも追いかけてくる
というお話でした)、それ以外で会社のブログで紹介できるものということで、
小津安二郎の『お茶漬けの味』をご紹介します。
あらすじは下記の通り。
会社勤めの佐竹茂吉は地方出身で質素な生活を好む。妻の妙子とはお見合い結婚。
上流階級出身の妙子にとっては、夫の質素な好みが野暮ったく思えてどうしてもイライラする。
憂さを晴らすために、友人の雨宮アヤ、黒田高子、姪っ子の山内節子らと遊び歩いている。
茂吉はそんな妻の気持ちを知りながらも、妻が嘘をついても知らないふりをしてやりすごしていた。
ところが、姪の節子がお見合いの席から逃げ出したことをきっかけに、茂吉と妙子が衝突する。
妙子は口をきかなくなり、あげくのはてに黙って神戸の友人のもとへ出かけてしまう。
一方の茂吉は急な海外勤務が決まって翌日羽田から出発するが、それを聞いても妙子は帰ってこない。
茂吉が発った後、家に帰ってきた妙子に、やきもきさせられた友人たちは厳しく注意をする。
平然を装う妙子だったが、茂吉がいないという現実に内心は激しく動揺していた。
そこへ突如茂吉が夜中になって帰ってくる。飛行機のエンジントラブルだという。
喜ぶ妙子に茂吉はお茶漬けを食べたいという。
二人で台所に立って準備をし、部屋に移動して一緒にお茶漬けを食べる。
お互いに心のうちを吐露し、二人は和解する。
夫婦とはお茶漬なのだと妙子を諭す茂吉。
妙子は初めて夫のありがたさ、結婚生活のすばらしさに気づく。
「こんな旦那様欲しいわ!!! どんだけ器大きいんだよ。」 と思いました。
嘘をついて外出しても怒らないし、「君らしくていいじゃないか」って許して
くれるんですよ。お手伝いさんがいて妙子は家事全然してないし。
この環境で旦那を疎んじる妙子に「罰あたれ!」と思ってしまいます。
安い銘柄のタバコ吸ったって、3等車両に乗ったって、いいじゃない。
小津安二郎の映画ではお馴染みの笠智衆が、今回はパチンコ屋のオヤジ
として出演しています。
個人的にはパチンコ屋のオヤジとしての小汚い恰好よりも 、
和服姿の笠智衆の方が好きです。 足袋を履かせてあげたくなります。
笠智衆が軍歌を歌うシーンがあって、歴史を記録するという意味でも
貴重な映画だと思います。
近代化が進む東京の街並みも見ていてわくわくします。
お見合いをすっぽかした節子に激昂し、茂吉に「あなた、うんとしかってやって下さいな!」
と言う節子。
妻に言われた手前、「節子さん、いけないよ。相手もあることなんだから。大人なんだから。」
と注意する茂吉。
妙子が席を立つと、節子に注意するフリを続けながら「もう行ったかな?」と
首を伸ばして確認する茂吉。
同じように首を伸ばして確認する節子。
二人の行動がシンクロしていてコミカルです。
こんなイメージ↓
基本、小津さんの映画では大きな事件は起こりません。
この映画も、短く言ってしまえば、うまくいっていなかった夫婦が
旦那の転勤をきっかけに向き合い、一緒にお茶漬けを食べる、
それだけの話です。
でも、その何も起こらないシーンのなんと平和で 美しく、愛しいことか。
奥さんが糠漬けを洗う時に着物の裾をさりげなく
持って濡れないようにしてあげている旦那の優しさ! 沁みる。
自分ちの台所なのに、普段お手伝いさんに任せっきりなので、
いろんな物の在り処を探し当てるのにちょっと苦労する二人。
「お!ごはんがあったぞ!」
宝探しをする子供のようでなんだか可愛いです。
二人でお盆にお茶碗とお新香を乗せて、台所から別室に移動するところが
とても印象に残っています。いつものローアングルで、奥行きがあって、
扉が閉まって、明かりがふっと消えて。なんでもないことなのに、なんでこんなに
刺さるんでしょう。
パートナーの大切さを忘れかけている人たちに是非観て頂きたい映画です。